吉村昭「死顔」
2021.08.16
 作家・吉村昭については以前に記したことがあるが、表題の「死顔」は彼の遺作になる。死をテーマにした短編集で、氏の実体験にある困難な肺の手術や、兄の死に臨む氏の心情も余すところなく書き表さられている。
 この作品は氏の推敲がなされぬまま出版されているが、後書きは作家である妻の津村節子が最期の時を綴っている。そこには、遺言として氏の死後に際に執り行うことを、死顔を見せる範囲、隠密裏に焼骨し弔問や弔意を辞退する案内の表示などを列挙している。また、すい臓がんで入院中の病院から自宅に戻り、点滴の管を自ら外し、もう死ぬと言って絶命したことも明らかにしている。
 氏の死生観に触れ、自分には難しいだろうが可能な限り近づいてみたいと思っている。時折、そんなことを考える年になってきたが、まだまだ俗念が多く、飲んだくれの戯言にしか聞こえないだろうな。と思う。
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